アセッサー養成講座の「グループ討議編」第2回となります。

今回は、グループ討議終了後の「記録の整理」「特徴の抽出」「特性の診断」などをどのように行っていくのかについてや、その際の注意点などを解説していきます。

グループ討議の観察・評価において、アセッサーが身に着ける技術

グループ討議終了後の「記録の整理」「特徴の抽出」「特性の診断」はどうやって行うのか

言動をS(状況)、T(意図)、A(行動)、R(結果)の切り口から整理します。
 S どんな時行動していたか
 T どんな意図の行動が多かったか?
 A どんな行動によって目的を達成しようとしていたか?
 R 意図に対して結果はどうだったか

STARの切り口で整理

発言の頻度極めて多い・多い・普通・少ない・極めて少ない
参画態度積極的・消極的  当事者的・第三者的  感情的・理性的
自己目的・集団目的  集団との距離近い・距離を置いている 
発言の特徴場面常に率先・適宜・他者に追従・周囲に促されて
座礁に乗り上げたとき・逸脱したとき・間髪を入れず・チャンスを逃がさず
目的周囲を動かす・特定の人への説得・プレゼンスの発揮・事態の打開
ムードを高める・困っている人を助ける
特徴堂々と・人に配慮して・恐る恐る・明快に・意欲的に・筋道立てて
思いつくままに・捲くし立てるように・力強く
結果周囲が反応・一部の人が反応・無視・反応に苦慮

上記を人物像(仮説)に落とし込む

集団活動の中で果たした役割集団の中の(     )であった。
参画態度や発言の特徴(   )行動が目立った
(   )が口癖だった
こだわっていた点、関心が向いたところ関心は(   )に向いていた
良かった点グループ活動に(   )的であった
(    )な姿勢は持ち味である
不足していた点(   )は甘くなっていた
(   )は大きく不足していた

言動の解釈において気を付けたいこと

評価を受ける人(受講者)は、アセスメント受講にあたって十分に準備をしてきます。また、「良く見せよう」という思いから普段とは違う、理想的な行動を取ることがあります。アセッサーは、普段から定着している行動と、その場での取り繕った行動を見分ける眼識が求められます。

1.あらかじめ準備して言える発言
「まず、目的と前提事項を確認しよう」
「まず、会社の課題を共有しよう」
「まず、討議の進め方と時間配分を決めておこう」
「終わりの状態(成果目標)のイメージを共有しよう」

2.普段とは違う、よく見られるための発言
「もっと議論を深めていきましょう」
「~さんはどう思いますか」
「その視点は素晴らしいと思います」

本心から言っているのか、自分を作って言っているのか、この見極め方は比較的簡単です。

  • 言ったことがその場限りではない。継続して同じ発言をしている。
  • 態度が一貫している。言ったことに責任を持っている。
    発言後、討議の進め方にどこまでこだわっていたか
    発言後、さらに具現化していく発言がみられたか などで判断
  • 態度に不自然さがないか、他の演習でも「その態度」「その行動」が表れていたか

以上が満たされていなかったら、「繕っている」可能性が高いです。能力評価は、「望ましい行動がどれだけ表れたか」を見ます。つまり、「行動の頻度」「行動の強さ」「行動の安定性」を見る必要があります。一瞬の行動に左右されないようにします。

パフォーマーとは

我々アセッサーは、よく「パフォーマー」という言葉を使います。「あの人はハイパフォーマー(高業績)だ」というようにポジティブな意味では使われず、ネガティブな意味で使っています。つまり、パフォーマーとは、「自分の実力以上に自分を表現する人」を言います。極論すると、「外見はいいけど中身がない人」になります。昇格がかかっているアセスメントを受講する際、少しでも良い評価を得られるために、「付け焼刃の準備をする人」「できる組織人を演じる人」です。グループ討議であれば、

  1. 良い人、やる気の高い人を演じます
  2. もっともらしいことを大げさに吹聴します
  3. 時流のキーワードを目いっぱい盛り込んで喋ります
  4. この点をもっと深める必要がありますねと指摘するものの、答えを出せないでいます
  5. 討議の流れに乗るのが上手いです。勝ち馬に乗って最後の手柄を取りに行きます

こういったパフォーマーを見抜くことも難しくはありません。表面上の行動をだけ観察するのでなく、背景(意図・意味)を斟酌したり、次に行う行動や発言に注目して「一貫性があるか」をチェックしたりすれば、すぐにわかります。
「上に上がりたい」⇒「でも実力がない」⇒「付け焼刃の準備をする」⇒「その場しのぎの行動をする」⇒「素の自分が出ないので余計低い評価がついてしまう」となってしまいます。

現状、アセスメント受講者の10~15%くらいは「パフォーマー」です。

グループ討議から人を見極める

能力評価の2つの方法

能力評価には、大きく2つの方法があります。すなわち、「結果の評価」と「プロセスの評価」に分かれます。

結果の評価とは「演習結果の採点」となります。ケーススタディであれば「正解」があり、「ここがあればプラスの評価」「ここがなければマイナスの評価」をしていきます。グループ討議では、「発言頻度」「発言の強さ」など、チェック項目があり、それに従って機械的に行っていきます。行動の解釈をせず、表出した行動をそのまま評価します。割り切って個別の行動や成果を評価していきます。結果の評価のメリットとは、誰でも評価ができる、むしろ人でなくても評価ができる点にあります。一度に、大量の人を評価することが出来ます。入学試験、国家試験のように、一発勝負となります。反面、プロセスを見ていないので、「的確なフィードバックができない」「能力開発へのアドバイスができない」というデメリットがあります。

プロセスの評価とは、たまたまでなく、「きちんと定着しているか」を評価します。したがって、行動の背景(意図・意味)を解釈しながら評価します。メリットは、能力評価の精度が高いとともに、人物評(価値やこだわり、思考スタイルや行動スタイル)までを提供していきます。したがって、「的確なフィードバック」「能力開発へのアドバイス」に繋がっていきます。反面、アセッサーの人材確保が困難、アセスメントに時間と費用がかかる、といったデメリットもあります。当然ながら、本掲載は「プロセスの評価」を行うアセッサーの養成講座という位置づけです

グループ討議の発言から「思考力」「思考スタイル」を見極める

グループ討議を観察して受講者の思考面を見るときは、発言の仕方ではなく、発言そのものに注目します。討議が終了したら、言動を整理・精査し、習慣化された思考スタイルを割り出していきます。

  1. 筋道立てて話しているか? 感覚的で思考のプロセスや根拠が分かりづらいか?
    ⇒論理思考(正解に向かう思考)-非論理思考(縛られず自由に考える)
  2. 事実に忠実で確実に言えること(客観)を話しているか? 自分の思い(主観)を話しているのか
    ⇒正当性・妥当性を優先する思考-独創性(価値観・感覚)を優先する思考
  3. 「我々は」と第一人称で話しているか? 「社会人は」と第三人称で話しているか?
    ⇒行動するための思考-助言するための思考
  4. 「~である」とはっきりと言いきっているか? 「~の可能性は否定できない」などと明確に結論付けるのを避けているか?
    ⇒自己責任の思考-責任回避の思考
  5. 具体論(行動ベース)で話しているか? 抽象論(コンセプトベース)で話しているか?
    ⇒現場実践思考-企画創造思考

グループ討議の発言から「姿勢面」を見極める

グループ討議を観察して受講者の姿勢面を見るときは、発言そのものよりも、発言していない時、発言の仕方に注目します。討議が終了したら、言動を整理・精査し、「こだわり」「関心」を割り出していきます。

  1. どんな状況で発言しているか?
    討議の場を切り開く ⇒ 積極果敢
    頓挫したときに出ていく ⇒ 困難時に一役買って出る
    意思決定の場面で出る ⇒ 決断を促して先に進める   
  2. 発言に意欲や熱意が表出されているか?
    熱く語っている ⇒ 直情的
    冷静に語っている ⇒ 自制的
  3. 本心・本音を語っているか?
    本心を語る ⇒ 真正直
    本心を明かさず ⇒ 合目的的、操作的、計算高い
  4. 反論されても怯まず、主張を続けていたか?
    全く怯まず主張を続ける ⇒ 執着性高い、貪欲、鈍感
    委縮してしまう ⇒ 逆風に弱い
  5. 自分の態度は一貫していたか?
    初志貫徹 ⇒ 基軸に従う、頑固
    臨機応変 ⇒ 合目的的、柔軟、こだわり薄い
  6. 集団の中心にいたか
    中心にいる ⇒ 主導的
    輪に入る ⇒ 友好的、協調的
    輪から出る ⇒ 評論的

グループ討議の発言から「対人面」を見極める

グループ討議を観察して受講者の対人面を見るときは、発言そのものよりも、「人との関係」「グループとの関係」に注目します。討議が終了したら、言動を整理・精査し、「対人面」を評価します。ここで「対人面」とは、対人場面、集団場面でどういう行動を取りがちか、習慣化されている行動スタイルを言っています。前項の「姿勢面」は態度、「対人面」は行動となるので、なかなか切り離せるものではありませんが、あえて分けて整理してみました。

  1. 人との距離は近いほうか、遠いほうか?(ビジネス場面、フォーマルな場面)
    近いほうである ⇒ 開放的
    遠いほうである ⇒ 閉鎖的、孤高
    状況によって変わる ⇒ 人を警戒
  2. 発信が多いか、受信が多いか?         
    発信が多い ⇒ 主張する、要求する
    受信が多い ⇒ 同調する、協調する、自制的
  3. まわりに気を遣うほうか、使わないほうか?
    気を遣う ⇒ 配慮的、協調的
    気を使わない ⇒ 合理的、マイペース
  4. 人間関係と成果どちらを重視するか?
    人間関係 ⇒ 平和的
    成果 ⇒ 合目的的
  5. 理屈のコミュニケーションが多いか、感情のコミュニケーションが多いか?
    理屈 ⇒ 合理的、成果志向
    感情 ⇒ 開放的、操作的、自制しない
  6. 集団の中での立ち位置
    リーダー ⇒ 主導、自立、当事者、自分が進めていく
    メンバー ⇒ 協力、支援、友好的、まわりに協力する
    輪から出る ⇒ 評論的、独立的
  7. 部下育成のスタンス
    指導・教示 ⇒ 自分のやり方を教える
    支援・育成 ⇒ 相手のやり方を助ける
    同志・激励 ⇒ 自分と相手と一緒にやる

グループ討議で活躍する人、目立つ人の特徴

グループ討議でリーダーシップを発揮する人を見ると、「総じて能力が高い」と判断してしまいがちです。いわゆる「ハロー効果」に陥らないように気を付けてください。グループ討議で活躍する人は、以下のようなスタイルやスキルを持っています。

  1. 積極的に発言する、行動量が多い、言動が派手、使う言葉が洗練されている
  2. 主導力がある、「説得力」「勢いと力強さ」で周囲を突き動かすことができる
  3. 見解が錯綜する中、きちんと「形」にまとめられる

短時間できちんとした成果を出すことができる一方、思考は浅い人が多いと思います。なぜなら、討議を深めること、熟考することよりも、討議を進めること、明確な答えを出すことに関心が向き、エネルギーが注がれるからです。成熟度の低い集団であれば、パフォーマーであっても集団を主導することができるものです。本当に考えることが好きな人は、一人熟考するものです。グループ討議で活躍していた人が、ケーススタディのレポートを見たら「無残であった」ということも少なくありません。

グループ討議で喋らない人は駄目な人か?

グループ討議で喋らない人は「能力のない人」でしょうか?

グループ討議で喋らない人の個人特性や能力を診断するためには、「なぜ発言しないのか」の理由を解明することが大事です。発言しなくても、「思考は回っている」「心は動いている」ことを忘れないでください。何かが足りないのですが、すべての能力がないわけではありません。

  1. 喋らない人
    意欲が薄い、あえて自分が喋ることはない ⇒ 向上心や向学心の不足
    人と一緒になって行動するのは苦手 ⇒ 協調性の不足
  2. 喋れない人
    発言するタイミングが掴めない ⇒ 積極性の不足
    頭で考えていることが「言葉」にならない ⇒ 論理思考の不足
    テンポが速すぎて討議についていけない ⇒ 理解力の不足
    自分の考えがまとまらない ⇒ 決断力、収束思考の不足
  3. 伝えない人
    説明不足 ⇒ 周りへの配慮不足
    一方的発信 ⇒ 自他分離姿勢
  4. 伝えられない人
    支離滅裂 ⇒ 言語化能力、物語化能力の不足
    冗長 ⇒ 対話力の不足

グループ討議で発言していない人から「重要な情報」を受け取る

グループ討議で発言していない人は「何をやっているのか」を注意深く観察する必要があります。まずは、外観を冷静に受け取ります。

  1. 他者発言をメモしている
  2. ボーッと聞いている
  3. 真剣に聞き入っている
  4. 頷きながら聞いている
  5. 資料を読んでいる
  6. 次にいうことを考えている
  7. 発言の機会を窺っている

こういったところから、「どんな特性があるか」見えてきます。
「人に関心が向く人」それとも「事柄に関心が向く人」
「人に気遣う人」それとも「マイペースの人」
「集団成果に貢献したい人」それとも「自分の成果や活躍に意識が向く人」
人は発言しているとき以上に、発言していないときのほうが本音(素の自分)が出やすい。しかし、1場面、1つの行動で決めつけてはいけません。人は、状況によって態度も行動も変わってくることを忘れないようにします。

頷き方、頷くタイミングで人の本音(素の自分)が見えてくる

少しマニアックになりますが、「頷く」行為ひとつとっても、そこから異なった個性が表れてきます。より注意深く見てみましょう。

  1. 話している間中、頷いている ⇒ 片手間で頷いている
  2. しゃべり始めた途端(理解する前)に頷き始めている ⇒ 配慮や優しさから頷く
  3. しゃべり終わってから(理解してから)頷いている ⇒ 理解できたから頷く
  4. 相手を見ないで頷いている ⇒ 自分に向けて頷いている
  5. 相手の目を見て頷いている ⇒ 相手に向けて頷いている

感受性が高い人はどういう行動を取るでしょうか?
受容性が高い人はどういう行動を取るでしょうか?

よくメモを取る人はどんな人だろうか

討議中や会話中にメモを取る人は少なくありません。メモの取り方でも、そこから異なった個性が表れてきます。より注意深く見てみましょう。

  1. メモを取らない人 ⇒ 情報を欲しがらない、自分の意思で進めたい人かも?
  2. 一心不乱にメモを取る人 ⇒ 正確に聞き取ることに専心、視野が狭い人かも?
  3. ポイントだけをメモを取る人 ⇒ 人の意見を活用したい人、要領の良い人かも?
  4. 各人の意見を整理するためにメモを取る人 ⇒ 全体を見て結論を模索する人かも?

その他グループ討議に関して

よくない討議の例と討議への介入の仕方

 個々人の個性や個々人の能力が発揮されない討議は「良い討議」とは言えません。もし、以下のような状況に陥ったら、「介入する」などの対策を打つべきと思います。

  1. 題意がわからない状態、期待成果が全くイメージできない状態
  2. まったく緊張感がなく、各自が好き勝手にしゃべっている状態 (井戸端会議)
  3. 先輩後輩などの関係にあり、下の者が譲ってしまうような状態
  4. 討議を破壊しようとする人がいる状態(今までの討議を返してしまう)
  5. 全員に対して発言せず、隣の人にだけ喋っている状態(オフィシャルな発言をしない)
  6. 一人が討議を支配している状態

そんな、アセッサーは場に介入し、討議を整えます。
介入の例
「皆さん、言いたいことが言い合えていますか?」
「好き勝手に発言するのでなく、論点を明確にして意見をぶつけ合ってください」
「それで全員のコンセンサスが取れていますか?」「曖昧な点はありませんか?」

介入は、「よくない状態を回避するとき」「同じような状態が続いており場面を変えたいとき」に行います。STARのS(状況)を変えて、A(行動)を引き出していきます。

大人数のグループ討議

グループ討議は、普通5~6人程度で実施しますが、かつて20人、30人のグループ討議をやったことがあります。以下2通りの討議を実施しました。

1.参加者30人、自分たちでテーマを決めて180分で討議をして結論を出す討議
大教室に椅子だけ並べて座り、ホワイトボード3面を自由に使って討議しました。「何をやりたいか」というテーマ決めの段階で活躍する人とテーマが決まってから活躍する人にはっきりと分かれます。能力差よりも個性差がはっきりと見えますが、30人いるとすべてを追いきれなくなりました。また、30人となると、埋没してしまう人が出てきます。「自分理解」の研修には向きますが、アセスメントにはあまり向いていないように思え、今は実施していません。

2.参加者20人、戦略を策定するケースを20分割し、各自に分割された断片的な情報を与え、120分間で全員が協力し合って「答え」を出す討議
誰かが先頭に立ち、全体計画を定めないと討議が進みません。次の段階では、「経営戦略担当」「マーケティング担当」「資金面担当」「人財組織担当」といった分科会に分かれ、並行して討議が進むことになります。その分科会の中で、それぞれが自分の居場所(役割)を探して協力し合います。個性は出やすいのですが、「思考面」が強い人が有利になります。大人数を一度に見るアセスメントとしては、有効な演習といえるでしょう。ただし、ベテランアセッサーでないと、観察評価は難しいと思います。

次回に向けて

いかがだったでしょうか。グループ討議では、非言語の情報も同じくらい重要であることがおわかりいただけたかと思います。

次回は、グループ討議編のまとめを行いたいと思います。