今回は、アセッサー養成講座の「グループ討議編」第1回となります。

「グループ討議編」では、グループ討議やグループワークなどを観察する際に、どのような点に着目して人材を評価していくのかについて解説をしていきます。

今回は、グループ討議やグループワークとは何か、どのように行われるのか、といった概要とそれらを観察し、人材を評価するために必要なスキルについて解説していきます。

グループ討議やグループワークから人の特性を見極める

ではまず、「能力とは」「能力評価とは」といった硬い話はいったん後回しにして、これから「グループ討議」を通じた人の評価の実践的な話をしていきたいと思います。

ヒューマン・アセスメントにおけるグループ討議の位置づけ

ヒューマン・アセスメントでは、最初の演習でグループ討議を行うことが多いです。集団の中の行動を約1時間観察することで、その人の全体像が見えてくるからです。個別の能力を細かくかつ深く評価することは難しいですが、「面談」「ケーススタディ」よりも全体像が見えやすいのがグループ討議の特徴です。しかし、その一方でメンバーによって、テーマによって、人の行動は変わりやすい、といったデメリットもあることを知っておく必要があります。

グループ討議は、ヒューマンアセスメントだけでなく、「採用試験」「任用試験」などにも利用されているので、これを読んでいる人の中にも、経験がある人は少なくないと思います。ここでは、我々アセッサーは、グループ討議を観察し、どう評価をしているかを紹介したいと思います。

グループ討議をみて、「わかった」という気になってはいけません。あくまでも「仮説」に過ぎず、状況が変わったら、また異なった側面が出てくるからです。無能なアセッサーは、じっくり精査せず、表面的な行動の一部だけを見て、「彼はリーダーシップがある」「彼は協調性がある」「彼は頭がいい」感覚的な評価、印象評価をしてしまいがちです。「STARコンセプト」に沿った情報精査が必要です。

討議の要領・ルール

ヒューマンアセスメントでは、5~6人でグループを編成し、通常は50~60分程度の討議をしています。一般的には、「全員着席」「ホワイトボードの使用不可」「2か所以上の同時発言不可」といった、緊張しやすい雰囲気の中で実施しています。なお、「場所は自由」「ホワイトボードの使用可」「2か所以上の同時発言可」といった自由な雰囲気で実施するグループワークを実施する場合もあります。各々の特徴は以下です。

  • グループ討議:厳しい条件の中でも能力が発揮できるかを評価する。余裕がないほうが、本人の「本音」が出やすい。
  • グループワーク:自由な雰囲気の中で自由に動いてもらう。潜在する能力が発揮しやすい。条件がよくなると、普段は隠れている部分も出てくる。

討議のテーマには以下のようなものがあります。「どういう人材が欲しいか」を考えて、もっとも相応しいテーマを選定します。

  1. 問題解決型討議:売上急回復の方法を話し合うなど、全員で問題解決を行う討議。論理的思考が強いものが有利。
  2. 企画立案型討議:10年後の学習塾のビジネスなど、新たな価値を創る討議。創造的思考が強いものが有利。
  3. 意味付けを行う討議:顧客満足とは何かなど、抽象概念の意味付けや定義を行う討議。自分なりの価値基軸をもっているものが有利
  4. 利益奪い合い型討議:部門代表者となって予算や人材を奪い合う討議。折衝力や調整力が巧みなものが有利。

グループ討議の観察・評価において、アセッサーが身に着ける技術

ヒューマン・アセスメントのアセッサーは、「演習の観察・記録」「事実情報の解釈・整理・分析」「プロファイリング」「所定の能力の評価」を行います。グループ討議でも同様です。

  1. 討議の観察・記録・解釈:被験者の行動を観察し、書き留める。討議のスピードに合わせて、5~6人分の行動を記録するのはかなり大変。
  2. 言動の整理・特徴の抽出:特徴ある発言や態度を抽出する、この特徴ある発言の抽出は慣れないと難しい。STARの枠に整理するとともに、特徴を抽出する。「いつ発言したか」「どんな発言をしたか」「何をやりたかったか」「効果は」など。
  3. 特性の診断:取り上げた特徴を整理・統合しながらプロファイリングする。「価値・こだわり」「思考スタイル」「行動スタイル」にまとめる。
  4. 能力の評価:所定の能力について「評価基準」に基づき評価を行う。

これからこういった技術について説明していきます。

討議を観察して言動を記録する

アセッサーは、「誰が話したか」「何を言ったか」「その反応はどうだったか」を頭の中で整理し、記録を取らなければなりません。一字一句の記録は困難なので、「こういうことを言った」などとなるべく解釈をいれない状態での「発言の要約」を書きとります。

ここで、多くの人は「言語」に気を取られてしまいます。大切なことは、「どのタイミングで発言したか」「誰を見て話していたか」「言い方の特徴はどうだったか」など、非言語を書きとっておくことです。さらに、「どんな目的でいったのか」「何を伝えようとしたのか」を解釈・解明しなくてはいけません。言葉は、単なる「記号」に過ぎず、意図や意味を解釈することによって評価ができるようになります。ここは、相当の訓練が必要となります。

「言語」だけ書きとっても、あとから「意味」「意図」を解釈しようと思っても難しいものがあります。その場で、ライブで感じたことが「正しい」ことが多いものです。実際のヒューマンアセスメントでは、討議はビデオなどに録画し、「聞き逃した部分」「解釈に迷った部分」はビデオを見ながら、そして前後の脈絡から推論しながら、「言語の意味付け」を行っていきます。下記のようなことは、見逃してはいけません。

  • 発言態度:言い方、語気、身振り、感情の表出、非発言時の態度、
  • 発言内容:結論が先か後か、よく使う言葉、客観か主観か、端的か冗長化
  • 集団との関係:中心、脇役、評論家、ご意見番、協力者、追随者

なお、最近はオンラインでのアセスメントの機会が増加し、ZOOMなどの会議システムによるグループ討議がめっきり増えました。オンラインになっても、アセッサーが行うことに変わりはありません。ただし、非言語の様子が入手しづらくなったので、工夫が必要になっています。

グループ討議を観察・記録するときのポイント

1.あとから討議を追いやすいため発言順に番号をつけておく
できれば、ポイントとなる発言には、「時間(〇〇分経過)」も控えておく

2.「事実」「事実の要約」と「解釈」「推論」を混同しないようにする
発言の解釈も、言動記録には書いておいたほうがよい
ライブでみたほうが「解釈」「推論」がしやすい、後からビデオで見ても気が付かないことがある
ただし、事実と解釈を混同しないよう、色を変える、( )無いい解釈を書くなど、混同しないように気を付ける

3.効果的な発言、その人の特徴と思われる発言は、マーカーまたは赤線を引く
プロファイリングや能力評価をするうえで、「有能な情報」「そうでない情報」を区別する

4.発言の記録は取れたが、解釈が上手くできない発言、すなわち「意図」「意味」がわからない発言をマークしておく
マークした部分の対処法としては、
あとからVTRをみて確認する
他のアセッサーの見解を聞く
振り返りの時、本人に発言の意図を聞く など

5.発言をしていない人の態度や行動を記録する
どうしても「発言」に気を奪われやすいが、参加者全員の行動を観察し、記録を取る
与件シートを読んでいる
相手を見て頷いて聞いている
発言のタイミングを見計らっている など

6.VTRフィードバックのときに見せたい場面、気づいてもらいたい場面をチェックする
皆、好き勝手に話しており、会話が噛んでいない
Aさんの発言がトリガーとなって、討議が大きく変化していった
AさんとBさんの対立場面が続く、お互い何を考えていたのか

「特徴ある発言や態度を抽出する」とはどういうことか

グループ討議を50分行うと、発言は100~150回になります。5人参加のとき、一人平均20~30回です。これらすべての発言を一つひとつ「吟味」しながら、個人の特性を診断することは非効率です。また、特徴のない「言動」を拾い上げて解釈しようとしても、本人の特性は表れてきません。評価を効率的に行うには、被験者の特徴となっている「言動(発言・態度)」に注目し、そこに解釈を加えていき、個人特性を診断していきます。

では、「特徴ある言動」とはどういったものでしょうか。討議を観察していて、「あれっ」「えっなぜ」と感じる言動です。つまり、特徴ある言動とは、「普通の人は取らない態度や行動」のことといってよいでしょう。そのためには、アセッサーは「普通の組織人の感覚」をもっていなければなりません。つまり、アセッサーは「組織人としてオーソドックスな判断基軸」をもち、変わった行動にすぐに気付く「感性(アンテナ)」をもっておく必要があります。そのため、会社でのマネジメント経験のない「芸能人」や「アスリート」の人は、企業人のアセスメントを行うことは大変難しいと思います。

※組織感覚:組織人としての感覚、判断や行動を選択するときのよりどころになるもの
「配慮」「謙虚」「協力」「円満」「円滑」「常識」「中庸」「忠実」など

言動記録の書き方

「言語」だけ記録を持っても、そのままでは評価に使えません。「場面を描写する」ように、周辺の様子も記録を取っておくことが、被験者のプロフィールの解明に役立ちます。

NGの例

A:「〇〇」といった
A:人の話を聞いている
A:「〇〇」と質問した

OKの例

A:「〇〇」 発言は短く、端的かつ力強く言い切っていた。
A:相手の目を見て話を聞くとともに、相手に見えるように発言に合わせて頷いていた。
A:「〇〇」 知識が豊富で、他社事例を自慢げに紹介していた。

グループ討議の言動記録の例

以下は、言動記録の例です。 アセッサーは討議を聞きながら、速記します。
【テーマ:学習塾の10年後のビジョンを構築する】

グループ討議の言動記録の例

こんな感じです。ここまででも、各人の特徴がある程度出ていたと思います。特に、赤字のところは、「特徴ある行動や態度」として取り上げてよいところだと思います。

「言動を解釈する」とはどういうことをするのか

「言動を解釈する」とは、「言葉」に意味を注入し、評価を行う重要な情報(インテリジェンス)に昇華させることです。

Aさん:「緊張しますね(笑)」
意図の推測:リラックスさせたいのかな?
意味の推測:みんな自由に発言しようということかな?
そこからいえる人物仮説:ムードメーカーとしても役割を担う人かな?

Cさん:「いや、50分と与えられた時間からすると、もっと議論する時間が欲しいですね」
意図の推測:時間かけて深い議論をしたい(ということ?)
意味の推測:情報共有よりも、思いを出し合ったほうがいい(ということ?)
そこからいえる人物仮説:ムードメーカーとしても役割を担う人かな?

Aさん:「Dさんはどう思いますか?」
意図の推測:進め方で2手に分かれたので、収束させたいのかな?それとも話したそうな表情を察して振ったのかな?
意味の推測:多数派を作りたかったのかな?ほかの選択肢を探そうとしていたのかな?
そこからいえる人物仮説:ファシリテーターとしても役割を担う人かな?

Eさん:あまり聞いていない態度、唐突な発言態度
そこからいえる人物仮説:マイペースが強い、人への配慮は少ない人かな?

次回に向けて

いかがだったでしょうか。グループ討議やグループワークを元に人材を評価するためのスキルにはどのようなものがあるのか、グループ討議を観察・記録するときのポイントなど、なんとなく理解していただけたら幸いです。次回は、グループ討議終了後の「記録の整理」「特徴の抽出」「特性の診断」などをどのように行っていくのかについて解説していきます。