アセッサー養成講座の「インバスケット演習編」第2回となります。
今回は、「インバスケット案件処理演習」のまとめと、インバスケット演習にまつわる様々な情報を紹介していきたいと思います。

インバスケット演習にまつわる情報

各階層で行われるインバスケット演習

一昔前であれば、自分の職責や組織の使命を正しく理解し、状況に応じて的確に判断しながら仕事を正しく進めていく力が求められました。したがって、インバスケット演習でチェックすべき点は「正しい理解」「ミスのない判断力」「報告・連絡・相談の徹底」が求められました。しかし、インバスケット演習の重点は、「判断力」から「推進力」、さらには「解決力」から「開拓力」にシフトしてきました。また、インバスケット演習は、初級マネジメント、中級マネジメント、上級マネジメントと各層で使用されるようになりました。それぞれの層で「見るべきポイント」が異なっています。

初級マネジメント 主任・係長

ミスなく、遅滞なく仕事を進める。自分がやることと、上司に相談するの切り分けが正しく出来ている。「報告・連絡・相談」のスタイルが身についている。不具合等を見つけたら、解決案を上位者に提案する。「理解力」「判断力」「伝達力」が求められる。

中級マネジメント 課長

的確に日常ベースの問題を解決しながら、テキパキと仕事を進めている。正しくかつ迅速に仕事を進めていく力が求められる。情報が不足していても、先行きが不透明であっても、仮説や推論を有効に使いながら、解決策を導くことが出来る。組織活動を適切に統制しつつ、意図する通りに組織を動かしている。「洞察力」「解決力」「統率力」が求められる。

上級マネジメント 部長

そもそもこの層は、定型業務はやらない。細かな業務管理も行わない。その代わり、強力なリーダーシップが求められる。これから組織をどの方向へと進めていくか、未知・未来の領域に向けた明確な進路決定、効果的な戦略の立案を行っている。また、リスクを伴う重要な意思決定を果敢に行い、先頭に立って組織を未来へと導いている。「先見力」「挑戦心」「決断力」が求められる。

インバスケット演習の克服に向けた準備

前述したとおり、「インバスケット演習を制する者はアセスメントを制する」と言われ、インバスケット演習を克服するための準備や訓練をしっかりと行ってくる受講者は少なくありません。ところが、インバスケット演習に関する書籍や資料、インバスケット演習を克服するための研修は、「本質」を突いたものとは言い難くなっています。「何が求められているか」「どの部分を見られているか」がずれている気がします。「事務手続きができるか」といった旧来型のインバスケット演習の指導になっているのではないかと思います。

安定成長期のインバスケット演習変革期のインバスケット演習
・自分の役割を正しく押さえる
・ルール通り、方針通りに仕事を進める
・情報を集めて実態を正確に捉える
・リスクを回避、手堅く仕事を進める
・判断をミスしない
・経営的視座と当事者意識を持つ
・自分の役割を超えて改善提案をする
・情報がなくても推論と仮説で進める
・チャンスを見つけ、逸早く動き出す
・失敗を恐れず挑戦する
何が求められているか

インバスケット演習を実施したら、振り返りを兼ねて討議をすると学習効果がある

同じ問題に遭遇しても、同じ状況におかれても、
「何を問題として認識するか」
「何を目指すか」
「どこまで考えるか」
「何に重きをおいて意思決定するか」
これらが人によって全く異なります。インバスケット演習を実施したら、振り返りを兼ねて討議をすると、自分の特徴に気付きます。また、「そういった見方があるのか」などと人から学ぶ点も少なくありません。さらには、「そこまで考える必要があったのか」「みんな凄いな」などと危機感が高まり、インバスケット演習をきっかけに、「深く、広く、遠くまで考える習慣」を身に着けようと決意をする人も少なくないと思います。ぜひ、互いの考え方を交換しあう機会を作ってください。

討議の進め方

  1. 討議する案件を決める
  2. 各自の解答を発表しあう
  3. 情報や知恵を出しあって最適解を話し合う
  4. グループとしての結論をまとめ上げる
  5. 複数グループで実施するときは「発表」「質疑応答」を行ってグループの解を共有化する

気づくポイント

  1. 何を問題として捉えたか?ほかの人はどうだっかた?
  2. 何を目標として設定し、そこまでの達成方法を多面的に考えたか?
  3. 自分は考えが深いか?浅いか? 広いか?狭いか? 速いか?遅いか?
  4. ゴールを見て考えているか?目先のことに振り回されるか?

ペーパレス化が進む

インバスケット演習は、今までは一堂に集まり、30~40ページからなるケースを配布し、所定の報告書に手書きをしていました。しかし、今ではインバスケット演習もペーパレス化が進んでいます。インバスケット演習は、配布するケースのペーパレス化、記入する報告書のペーパレス化と2つの側面からペーパレス化を行うことができます。

集合演習(紙)オンライン(画面)
配布するケース横に広げて、一度に複数案件の情報をみることが出来る基本的には複数画面を同時に見られないが、
画面を分割する、
もしくは複数のPCを活用することにより、一度に複数案件の情報をみることが出来る。
作成する報告書書くことをまとめるにも時間がかかる
漢字が分からない、調べると時間がかかる
書きながら考えることが出来る
コピー&ペーストが自由に使える
インバスケット演習のペーパレス化

インバスケット演習がペーパレス化になって何が変わったでしょうか?

  1. WEB上でインバスケット演習を行うため、通信環境やITリテラシーの差によって「有利」「不利」が出るようになった
  2. 受講者が集まらず、離れた環境で行うととなると、以下の弊害が生じる
    PCやモニターを複数使って実施した方が有利、これをコントロールすることは難しい
    本人に代わって実施する、いわゆる「替え玉受験」も可能となる
  3. 書く方は、圧倒的にPC利用のほうがやりやすくなる
    漢字の変換がすぐ行われるため、コピー&ペーストができるため、考えながら書くことができるため、手書きよりも早くなった
    手書きであれば「読みやすい字」「読めない字」などがあったが、評価する側の負担は減少した

インバスケット演習に馴染めない人

インバスケット演習は、思考面の能力や仕事の進め方などを見るために、非常に適した演習(ケーススタディ)であるといえますが、馴染めない人もいます。

通常、我々は「専門領域」で、「人間関係」ができあがった状況で、確立された「ルールや手続きの中で仕事を進めています。しかし、インバスケット演習は、専門外の領域、人間関係が出来ていない状態、仕事の手続きやルールがはっきりしない状況で行うことになります。そのあたりで戸惑う受講者、いきなりバーチャルの環境に馴染めない受講者も存在します。また、「わからない点」は仮説や推論のうえで思考を進めますが、インバスケット演習では検証をしないうちに指示を出すことになります。そのあたりで違和感を覚え、思考や行動が止まってしまう人も少なくありません。

環境変化が激しいほど、職位が上がるほど、経験がない中、ルールが定まっていない中、先がはっきりと見えない中、思考を進め、行動をする必要性が増してきます。しかし、「正しく進める」「ミスなく進める」ことにこだわって仕事が捗らない人が多いものです。

インバスケット演習(案件処理演習)は職種によって有利・不利はあるか

インバスケット演習(案件処理演習)では、組織の責任者となって意思決定、問題解決、業務指示を行いますが、「営業課長」「店長(小売やサービス)」「エリア統括マネジャー」といった営業系の職種(ラインマネージャー)となるケースがきわめて多くなっています。その理由は、「ルーティン業務を持つ」「明確な組織目標を持つ」「顧客や関係者との接触がある」「競争の視点を持つ」ことで様々な場面を作り出すことが出来るからです。以下のような人は、インバスケット案件処理演習をすぐにやれと言われても戸惑ってしまうしれません。

ラインマネージャースタッフ
明確な業績目標がある
専門知識がなくても業務を進められる
外部志向、接触する部門が多い
変化にさらされている
明確な目標を設定しづらい
専門知識がないと業務が進まない
内部志向、接触する部門が固定的
変化にさらされづらい
ラインマネージャーの特徴
  1. 1人で調査や研究をしている人  「研究員」「調査員」
    すぐに対応する仕事、すぐに答えを出す仕事をしていない
    あまり人と接しない仕事であり、人に指示を出すこともない
  2. 限られた範囲でミスのできない業務を行っている人 「品管」「製造現場」「法務」
    一定の「基準」「手続き」「ルール」に基づいて厳格に仕事を進めているため、柔軟な対応を行う場面が少ない

しかし、「想定外であっても柔軟に対応する姿勢」「経験外であっても解決策を出す力」はどの職種であっても求められます。インバスケット演習の経験をきっかけに意識やスキルを高めていく必要があります。

インバスケット案件処理演習が出来る人は「有能か」「優秀か」

インバスケット案件処理演習は、「推論」「仮説」を有効に使って未知の分野でも仕事を進めていくことができます。問題解決や業務管理を進めていく力があるといえます。だから、インバスケット案件処理演習が出来る人は「有能」「優秀」といえますが、それだけでは「有能なリーダー」「優秀なマネジャー」とは言いきれません

当面の成果は間違えなくあがっていきますが、「経営的視座」「長期的視点」「変革の姿勢」があるかどうかは十分にわかりません。

  1. Why 仕事の意義や目的を考える、理想(こうあればいい)を描く人
  2. What 混沌とした中で「課題(何をやるか)」を見つけられる人
  3. How 課題が明らかになった段階で「方法」「手順」を考えられる人

インバスケット案件処理演習は、現場の問題を短時間で解決すること、組織活動の運営管理をしっかりと行うこと、確実に成果を導き出すこと、こういったことが求められます。上記の➂Howの発揮が中心となります。したがって、➀Why、②Whatの力を発揮してもらう演習が別途必要になってきます。これが、インバスケット方針立案演習です。また、インバスケット演習のほか、経営戦略策定演習、ビジョン構想演習を行う場合もあります。

各演習の領域

インバスケット案件処理演習のまとめ

いままでお話したことのポイントを以下にまとめてみます。

インバスケット案件処理演習とはどんな演習か

組織の責任者となり、120分程度の時間で、組織内で発生する問題(15~20件程度)の解決を行う演習です。ただし、解決策を出すだけでなく、関係各署に指示を出し、組織活動を運営管理する力も求められます。インバスケット案件処理演習は、多くの場合、インバスケット方針立案演習とセットで行われます。インバスケット案件処理演習は実務能力が試されますが、インバスケット方針立案演習は企画能力が試されます。

インバスケット案件処理演習で何がわかるか

仕事を進めるスタイル(優先順位づけ、価値判断基軸、指示の出し方)がわかる
思考のスタイル(スピード、正確性、視座の高さ、視野の広さ)
問題解決能力、業務管理能力の水準がわかる

各階層で実施されているが、階層ごとに「見るべきポイント」が変わってくる

初級マネジメント 「理解力」「判断力」「伝達力」が求められる  貢献する
中級マネジメント 「洞察力」「解決力」「統率力」が求められる  推進する
上級マネジメント 「先見力」「挑戦心」「決断力」が求められる  切り開く

アセスメント受講に向けて様々な対策や準備がされている

  • 優先順位をつけること
  • 再発防止を心がけること
  • 潜在する問題を見つけること
  • 複数方向に指示を出して成果を確保すること

上記のようなことをしっかり教わってくるが、「水面下」「行間」「全体構造」が読めていないため、踏み込みが浅く、上辺だけの解決・指示となっている。アセッサーは、A(指示内容)だけでなく、T(指示の意図)、R(指示の効果・妥当性)をしっかりと見極める必要がある。

アセッサーに求められる能力

アセッサーは、インバスケット案件処理演習を通じて、「仕事スタイルの見極め」「思考スタイルの見極め」「所定の思考力の判定」を行う必要があります。

  1. 普通の軸をもって「受講者の特徴(普通でないところ)」を見極める観察眼
  2. A(指示文)を読んで、T(意図)を解明する洞察眼
  3. A(指示文)を読んで、R(結果)を解明する鑑識眼

これら部分の解明は、アセッサーの恣意的な判断に陥らないよう、アセッサーの合議制で行っていきます。最後は、リードアセッサーの最終判断となります。

指示文の判定

次回に向けて

今回は、「インバスケット案件処理演習」のまとめと、インバスケット演習にまつわる様々な情報を紹介しました。次回は、インバスケット演習の中でも、企画力や構想力を測定する際に使用される「インバスケット方針立案演習」についての解説を行っていきます。