今回は、アセッサー養成講座の「論文審査編」第3回となります。「論文審査編」のまとめを行い、職場評価とアセスメント評価の違いについて解説を行っていきます。

論文審査のまとめ

論文審査で引き出すもの、見えるもの

論文審査は、以下(再掲)を組み合わせた設問により、本人の特性や能力を評価するものです。

レイヤー質問例引き出すもの見えるもの
未来(意志)を聞くどうなりたいか
何をしたいか
20年後の予測
未来志向
挑戦心
構想力
文章力
構成力
論理思考
創造思考
自己理解
誠実性
現在(認識)を聞くどう考えるか
自分はどういう人間か
自分の課題は何か
自己理解
問題意識
向上心
過去(体験)を聞く自慢できることは何か
自分らしい体験は何か
自分が変わった経験は何か
自己肯定感
自己表現
得意な能力

また、以下の点に注意して読むと、資質面や思考面の特性が見えてきます。

着眼点見極めるもの
全体の構成
全体の流れ、段落を変えるタイミング
構成力、思考のスタイル
文章
長い、短い、因果が明快、不明瞭、断定的、情緒的
文章力、思考のスタイル
表現
独自表現、大袈裟、横文字が多い、稚拙な表現、美的表現、含みを持たす
自己表現、品格
立ち位置
客観的、主観的、第一人称、第三人称
物事へのかかわり方
スケール
大胆、冒険、堅実、現実
思考や行動の範囲
背後にあるもの
世界観、価値観、自信、不安、強い思い、自慢
根底にあるこだわり
資質面や思考面の特性

論文審査の限界

論文審査では、「言語脳」持つ人が有利になりがちです。そのため、論文審査での評価だけを頼りにするのではなく、その他の手法も用いて、総合的に能力を評価する必要があります。

  • 言語脳:言語で考え、言語で表現
  • 数字脳:数値に置き換え、数値で表現
  • イメージ脳:イメージで考え、イメージで表現
  • 感覚能:五感で考え、五感で表現

何度読んでもわからない文章

論文審査に限らず、ケーススタディでもそうですが、「何度読んでもわからない文章」によく巡り合います。意図も意味も解らない。その場合、以下のようなケースが考えられます。

  1. 実は、本人もわかっていない。とりあえず空欄を埋めているだけで、「メッセージ性」がない文章になっている。抽象論、キーワードで文章を繋いでいるだけで、言いたいことは特にない
  2. 本人は「言いたい」ことがあるが、表現できていない。時間がなく、パニックになってしまい、「主語」「述語」「形容詞」「助詞」などの使い方で混乱をきたし、第三者が解読できない文章となっている。
  3. 本人は「普通」に書いているつもりであるが、あまりに客観性に乏しく、自分の世界観に浸ってしまい、第三者が解読できない文章となっている。特に、イメージ脳の人に多い。自分は数年先に飛んでおり、その世界を語っているが、第三者が読んでも理解できない。
  4. 本人は「普通」に書いているつもりであるが、あまりに「難語」「情実表現」が多く、読み手の理解が進まない文章となっている。

➀以外は、ミスコミュニケーションの状態です。対策は以下のようにします。
➀のパターンは、メッセージがないため、プラスの評価は出来ない。
②のパターンは、ストレス耐性が低い。解読し、本来書きたかったことを元に評価する。
③のパターンは、論理思考や表現力に乏しい。解読し、将来構想としては評価する。
➃のパターンは、表現力や配慮に乏しい。どうにか解読し、内容を評価する。

「複数人で時間をかけて解読する」これが基本です。特に、天才と呼ばれるような人は➂や➃のような文章を書くことが少なくありません。「わからない」といって切り捨てるのは早計です。

職場評価とアセスメント評価の違い

「えっ、あの人こんなに思考能力が低いの?」 

職場では、博学、勉強家、論理思考の高い人と思われる人が、アセスメントを受講すると、あまり高くない、むしろ低い評価となる場合があります。 

パターン1の人

圧倒的な専門知識があり、考えなくても「知識」「経験」の中から答えを出すことが出来る人。専門分野であれば、正しい判断や正しいソリューションは導けます。しかし、専門分野であっても、未来は切り開けません。「考える」ことをしてこなかったため、知識や経験の範疇を超えると、途端に思考が止まってしまう人は少なくありません。論理思考は不足しています。

パターン2の人

圧倒的な専門知識と自分なりの思考手順を持つ人です。単に「知識」から答えを出すのでなく、自分のフレームや手順で考えて答えを出していきます。未知・未来に向けても、思考は進んでいきます。しかし、「パターン化」のきらいがあり、柔軟性や想像性がありません。パターン1の人よりも付加価値は付きますが、「同じような答え」となってしまいます。

パターン3の人

圧倒的な専門知識と手堅い論理思考を持つ人です。「情報が揃う」「先が見通せる」という条件が整えば、良質のソリューションを行うことが出来ます。しかし、洞察力、仮説構築力、想像力、決断力が足りないため、思考が進みません。「事実にもとづき、手順を踏んで考え、十分な根拠を示しながらミスのない答えを導く」といったスタイルの人は、アセスメントでのアウトプットの質は高まりません。

「えっ、あの人こんなに思考能力が高いの?」

逆に、職場ではどんくさいと思われている人が、アセスメントを受講すると、意外と高い評価となる場合があります。深く考える習慣、見えない部分を見通そうとする習慣がある人です。

パターン1の人

専門知識が十分でないけれども、それを「よく考える(推論・想像・解釈)こと」で不足する知識をカバーしようとする人です。「ということは…ということが言えるかもしれない」「水面下にはこういったことが起きているかもしれない」という思考スタイルが身についています。しかし、よく考えているものの、知識や経験の不足から、十分なアウトプットには至りません。知識の少ない若い人に多いと思います。

パターン2の人

あまり深刻にならず、深くは考えないけれども、「感じとる力」に長けた人です。「次はこうなるだろう」「こんな世界がくるかも」といった直感に優れています。ただし、あまり成果志向が強くなく、人に伝えようとしたり、自分の思いを実現しようとしたりする意欲はありません。周囲に伝える前に忘れてしまう人も多いと思います。アセスメントではこういった人も評価されます。

パターン3の人

いわゆる「右脳型の人」で、1つの情報から様々に解釈・発想を繰り広げていきます。しかし、イメージや感覚が先行するため、人に対して丁寧に筋道立てて説明することが出来ません。「言語力」「論理構築力」「説明力」が不足するため、自分の能力をまわりの人たちに認めてもらうことが出来ません。天才肌の人もここに含まれます。自分の思考様式や思考手順を十分理解したうえで、メッセージの解読をしてもらう人が現れない限り、才能を認めてもらえません。しかし、アセスメントではこういった人は高く評価されます。

アセスメント評価の例

 AさんBさんCさんDさんEさん
専門知識
思考手順
論理思考
洞察・想像
構想・描写
意思決定
評価の比較職場≧アセス職場≧アセス職場≦アセス職場≦アセス職場=アセス

おわりに

今回で、アセッサー養成講座の「論文審査編」が終了となります。次からは、能力評価の方法やプロセスを解説していく予定です。目に見えない能力をどう測るか、演習や環境によって変わりがちな行動や成果から、どのようにして能力を測るか、このあたりを明らかにしていきたいと思います。