今回は、アセッサー養成講座の「論文審査編」第2回となります。前回に引き続き、小論文のテーマ「現在を問う論文」「未来を問う論文」の例と論文の読み解き方についての解説を行っていきます。

小論文のテーマと見方 現在を問う論文

現在を聞く設問1

次の設問に自分なりの感性で答えてください。
「Who are you?」

受講者はかなり悩んだうえで論文を作成すると思います。

  1. 過去の自慢をする人 ⇒ 過去を自慢する
  2. 自己紹介、自分の仕事スタイルなどを語る人 ⇒ 自分を表現する
  3. 自分の将来の夢を語る人 ⇒ 「個性=夢」という認識をもつ

フリーの状態で、「過去を振り返る人か」「未来を見る人か」が分かります。また、②の今の自分を述べる形であっても、「これからどうしていきたいか」について述べられる人であれば将来を期待することができます。事実を羅列するだけでなく、自分の「思い」を打ち出せる人を上にあげたいと思います。なお、この設問で「文章力」「知的レベル」を見ることはできますが、具体的な内容面になると大袈裟に書く人も多く、あまりあてにはならないと思います。

現在を聞く設問2

次の設問に自分なりの感性で答えてください。
1.あなたの特性
2.あなたの強み
3.あなたが最も力が発揮できる状況
4.あなたが最も苦手な状況

まず、自己認識が正確にできているか、自分の感性から自分を表現できるかをチェックします。性格特性といった表層面にとどまらず、動機、価値観、信念など、奥深いところまで自分を語れているかをチェックします。もし、面談と合わせて実施できるなら、「つもりの自分」と「他人目の自分」とが合致しているかがわかります。「つもりの自分」と「他人目の自分」とがずれている人は、このままではこれからの成長は期待できません。

また、一般論・建前論しか語っていない人もそうです。自分にバリアを張って、「素の自分」を見せようとしていません。自分の真正面から向き合っていない人は、これからの自己啓発はあまり期待できません。もっとも、見たい点は「自分と深く向き合えるか」という点です。これができれば、とどまることなく成長することができます。世の中の70%くらいの人は、非常に浅いレベルでの自己理解にとどまっています。

現在を聞く設問3

あなたは、今、職業人生においてどんな課題に直面していますか?また、それをどうやって克服しようとしていますか?

本来、このテーマに関する論文を書こうとしたら、「自分の理想」と「現状の自分」を客観的に把握し、そのうえで「成功の鍵なる課題」を抽出していくプロセスをたどる必要があります。プロセスをきちんと辿って記述しようとすると、「なりたい自分」「現状の理解」「課題設定力」「課題解決力」などが把握できる設問となります。

しかし、多くの場合、自分のマイナスポイントを当たり障りなく書く人が多いでしょう。多くの人は、具体的な目標がないため、出来ていない部分を指摘してくるでしょう。しかし、「リーダーシップがない」「変革心や挑戦心がない」と書くと、マイナス評価を受けがちなので、「民主型リーダーのため、牽引するパワーがない」「現実的成果を目指すため、冒険をしない」といったマイナス面を抑えるような書き方をする人が多くなるでしょう。

この設問は、夢や希望を持った「有能な人」を見つけるためには効果的であると思います。

現在を聞く設問4

「     」について、あなたの考えを述べてください。
例)健康、学校教育、趣味、才能

所定のテーマについて自由に述べてもらいます。テーマは「だれもが知っている身近なテーマ」に設定するのが良いでしょう。記載内容は、下記のようなものになるかと思います。

  1. 知っていることを書く(こういうものだという解説、解釈を述べる)
  2. テーマに関する自分の見解を述べる(こうすべき、こうありたいと理想を述べる)
  3. 自分との関連性を書く(じぶんはこうだったと経験を述べる)

この設問では、物事に向き合う姿勢が表れます。第一人称で向き合う人、第三人称で向き合う人、目標を語る人、現状を語る人、知識の豊富さなどがわかります。

現在を聞く設問5

「女性の管理者が他国よりも少ない理由」について、あなたの考えを述べてください。
「欧米各国と比べて我が国の労働生産性が低い実態」について、あなたの考えを述べてください。
など

物事を整理して考えられるか、わかりやすく説明ができるかを掴むには、このように「背景」「原因」を問うことが適しているでしょう。これまでの設問1~4までと異なり、「どんな人か」を知るよりも「思考が優れているか」どうかが分かる設問になります。既に「人となり」がわかっていて、「考える力(特に論理的思考)がどれだけあるか」を知りたい場合には、良い設問であると思います。

小論文のテーマと見方 未来を問う論文

未来を聞く設問1

あなたの夢は何ですか。
1.描いている夢を説明してください。
2.それをどうやって達成させようとしていますか。
3.足りないものは何ですか。
4.サポートしてもらいたいことは何ですか。

未来を聞くには、「夢」「志」「理想」を述べてもらうと良いでしょう。ただし、単なる願望でなく、実現させたいと心底から思っていることを書いてもらう必要があります。2~3を答えてもらうことにより、「本気度」「実践展開力」が分かってきます。また、このような設問は予告せず、その場で取り組んでもらった方が「未来志向」「上昇志向」がはっきりと見えてきます。その場の思いつきでは、2~4の設問に答えられないでしょう。

未来を聞く設問2

20年後の生活スタイルを展望してください。
1.スマホはどのように変わっていると思いますか。
2.自動車はどのように変わっていると思いますか。
3.なくなってしまうものは何だと思いますか。
4.新たに生まれてくるものは何だと思いますか。

この設問では、「想像力」「構想力」が分かってきます。「未知」「未来」に向けて思考を進めることが出来るかを問うものです。たくさん集めた情報を分析して答えを出すタイプの人は、こういった設問が苦手です。手元の情報を手掛かりにして想像力を発揮し、様々な可能性を探り、自分なりの将来像を描くことが求められています。企画系の業務に携わる人にとっては不可欠な能力でしょう。

未来を聞く設問3

あなたの担当する事業の10年後を描いてください
1.現状、どんな価値を生み出していますか。
2.なぜ、変革が必要なのですか。
3.変革後、どんな価値を生み出すことが求められますか。
4.最終的なゴール(変革後の社会環境)を描いてください。

自分の担当する事業に関する設問になるので、設問2と比べると答えやすく、比較的簡単に実施することが出来ます。しかし、「専門用語でごまかす」「一般論で言質を取られないようにする」「人が考えていることを盗む」といったことが生じがちです。対策としては、以下のことを実施することが有効です。

  1. 「業界を知らない投資家に説明するつもり」で書いてもらう
  2. 「入社を希望する学生に説明するつもり」で書いてもらう
  3. プレゼンテーションを行い、その後質疑応答の時間を設ける

次回に向けて

今回は、小論文のテーマ「現在を問う論文」「未来を問う論文」の例と論文の読み解き方についての解説を行いました。「過去を問う論文」「現在を問う論文」「未来を問う論文」については、どのような能力を引き出したいかによって、使い分けていく必要があります。また、同じレイヤーの中でも、人間性を見たいのか、自己理解を見たいのか、論理思考力を見たいのか、など目的に合わせて設問を使い分けていく必要があります。

次回は、論文審査編のまとめを実施したいと思います。