ヒューマン・アセスメントは、被験者に数々の刺激を与え、反応行動を分析することで、個々人が有する特性と能力を診断します。ある「環境」のもと、どんな「意図」で、どんな「行動」を行い、「結果」はどうであったか、いわゆる「STAR」の切り口で整理し、共通する要素を抽出していきます。

ヒューマン・アセスメントでは、様々な場面の行動や思考を見るため、「グループ討議演習」「面談演習」「意思決定演習」「問題解決演習」「企画立案演習」などを行います。

Situation
状況
Task
意図
Action
行動
Result
結果
困難な問題に直面したとき
人と意見が対立したとき
リーダーを任されたとき
未経験の場面に遭遇したとき
先行きが見えないが決断を迫られたとき
時間的なストレスがかかった
思い通りに事が進まないとき
部下の指導をするとき
〇〇のとき
様々な場面における行動を集積し、被験者の傾向を見る意識や関心はどこに向かうかどういう思考・行動スタイルを持っているか所有する能力の程度はどうか

ヒューマン・アセスメントは、2日間程度かけて、4つ以上の演習に取り組んでもらい、様々な情報を収集するため、かなり精度よく被験者の個人特性や能力水準を評価することができます。しかし、「集合研修と同様に被験者(1回あたり20名程度)を1か所に集めて行う必要があるため、またコストも相当にかかるため、企業内のアセスメントが中心となります。年初に予算を組み、対象者を集めて実施し、昇格審査を行ったり、能力開発の方向づけを行ったりします。しかし、入社希望者や転職希望者に対し、長時間拘束したり、圧力をかけながら演習に取り組んでもらうことは困難です。もっと、簡便かつ安価、それでいて精度の高いアセスメントが必要となるでしょう。

ヒューマン・アセメントは、個々演習の結果を直接評価する試験とは異なります。「出来たか/出来なかったか」ではなく、「能力をどれだけ持っているか」を診断するものです。複数の演習から総合的に評価するとともに、被験者ひとりひとりの特性を掴めていないと正しい評価はできません。

能力は「これからの可能性を規定するもの」、成果は「能力発揮の結果として獲得したもの」と言えます。しかし、成果をあげられる人は「能力が高い」と言えるかとなると疑問が残ります。「能力」と「成果」の間には様々な要因が介在します。したがって、両者の相関関係は強いと思いますが、「成果をあげられる人」イコール「能力が高い人」とは言えません。あえて言うのでしたら、「成果をあげられる人」イコール「現職務で求められる能力が高い人」ということになります。名選手が必ずしも名監督にはならないように、現職で成果をあげている人でも、職種が変わったり、職位があがったりした場合の成果はわからないということになります。それを規定するのが「能力」であり、能力を測定するのが「アセスメント」ということになります。

能力は直接見ることができないので、受講者の発揮された成果や行動から論理的な推論を行って能力の水準や傾向を診断します。ヒューマン・アセスメントでは、「能力として定着しているのか、たまたまできたのか」「習慣化された行動か、意図的にやった行動なのか」を短時間で見極める必要があります。そのため、直接スコアに表れませんが、受講者の個人特性(動機の根源、性格、思考スタイル、行動様式など)を把握することが重要となります。

日常の仕事上の成果は、「思考・対人能力」のほかに「経験知とか権限」というものも含まれています。能力が高まらなくても、経験や権限が増えれば、それに伴って成果も高まってきます。ベテラン社員が会社(業界)を変えた途端、実績があがらなくなったということも起こり得ます。「いままで何ができてきたか」で能力を判断する考え方(Proven Trade Record)は、この点に注意が必要でないかと思います。「能力にはチャンスを与え、成果には報酬を与える」というのが、人事施策の基本です。