Youtubeに「優秀な上司はなぜ部下の育成が出来ないのか」というテーマで動画を投稿しました。本記事では、動画の内容を要約して紹介していきたいと思います。

部下育成とは

部下育成といっても、人によってその意味合いは異なるでしょう。以下が私の見解です。

  1. 部下を職業人として躾ける ⇒ 部下指導 部下を知らなくても一方的にできること
  2. 部下に業務上の知識や技術を教える ⇒ 部下指導 部下を知らなくても一方的にできること
  3. 部下が仕事しやすい環境を整える ⇒ 部下支援 障害物を取り除いてあげる
  4. 部下の目指す人材像に向けて援助する ⇒ 部下育成 部下をよく理解してサポートする
  5. 部下の個性を引き出し、今後のキャリアを一緒に考える ⇒ 部下育成 部下に寄り添ってサポートする

したがって、部下育成とは上記の➃と⑤ではないかと思います。

部下育成は上司がやるものか?

上記➀~➄まで実践している上司は少ないと思います。アセスメントにおいて「部下育成面談」を実施しても、「部下育成」のレベルまでいっている人は3割くらいだと思います。多くの人は「部下育成=仕事の技術面の指導」「部下指導=チアアップ」くらいにしか捉えていません。なぜなら、上司も➀と➁の指導しか受けていないからです。また、成果主義の人事制度が拍車をかけ、「組織成果に向けた指導」「組織の立場からの指導」になっているからです。

はっきり言って、上司は人材育成の素人です。私は、部下育成(社員育成)は上司に任せっきりにせず、人事部門の「チューター」「キャリアカウンセラー」と一緒になって行うべきと考えます。むしろ、④や⑤については、人事部門の「チューター」「キャリアカウンセラー」が中心となり、上司はサポートに当たればよいのではないかと思います。

部下育成の能力を強化するには

上司に「コーチング研修」を受けさせても駄目でしょう。内面が変わらないのに、外面の「コーチング」だけやっても逆効果になります。いわゆる「答えありきの誘導コーチング」になってしまうでしょう。職場の上司の「部下育成」の能力を強化するには、上司の状況によって異なりますが、以下3つの階層からのアプローチが必要です。

  1. スタンスレベル:部下育成の意味、必要性を理解し、自分の使命として位置づける
  2. スタイルレベル:「無条件で受容する」「部下の立場から考える」というスタイルを身に着ける
  3. スキルレベル:コーチング技術を身に着ける、状況に応じたアドバイスを学ぶ

部下育成が上手くできないパターンと強化方法

自分が主人公 部下を手足のように使ってしまう

スタンスレベルの変容が必要です。「自分が活躍して自分がヒーローになる」ことよりも、「部下が活躍して組織の成果が上がり、結果自分がヒーローになる」というように、仕事へのスタンスを変えていかなければなりません。「最終的な成果」を念頭に置き、仕事のやり方を変えていく努力が求められます。

会社方針は絶対、部下が何と言おうと会社方針に従わせる

「会社方針は絶対」「会社に服従する」というスタンスをアンラーンし、組織は様々な価値観やスタイルを持った人の集まりであることを認識してもらいます。次に、会社方針と異なる価値観や見解でも公平に扱うこと、どんな「考え」を持っても敬意を表し、認め合うことを習慣化していきます。ただし、「行動」となると是々非々で対応していく必要があります。組織方針と異なる行為は、組織の承認が必要になることを理解してもらいます。

世話好きであるが、多様性がなく、自分の価値観を押し付けてしまう

「組織人はこうあるべき」といった自分なりの規範やルールが強く出てしまいます。このスタンスをアンラーンしないといけません。一つ前のパターンと同様、組織は様々な価値観やスタイルを持った人の集まりであることを認識してもらいます。また、「部下育成の正解は部下の心の中にある」という意識で部下育成を行ってもらいます。部下の価値観や立場で考えるというスタイルを習慣化していきます。

部下を支援することで自分の立場が危うくなることを避ける、自分の手を汚さない

「自分の評価を下げたくない」「会社からにらまれたくない」といった自己防衛のスタンスが強く働き、「会社に従順な部下を育てる」ことに意識が向いてしまいます。これでは「変革リーダー」を育てることはできません。「個性を伸ばす」「自由に伸び伸び育てる」「変革者を歓迎する」というスタンスをもってもらいます。少なくても、「ノー」から始まるコミュニケーションスタイルを改め、「イエス」ではじまるコミュニケーションに努めてもらいます。

部下に対するアドバイスがわからない

経験不足であったり、自分の軸が確立していなかったりすると、アドバイスができないことがあります。すぐに「経験を詰め」「軸を持て」といって無理でしょうから、まずは寄り添い、「一緒になって考える」ことを励行しましょう。

本日のまとめ

部下を育成するには、自分のことをさておいて、部下の成長を真剣に考えていく「度量」「覚悟」「寛容さ」が必要です。部下育成のすべてを上司に任せるのは酷だと思います。人事部の支援(カウンセラー、メンター)や外部から支援(ビジネスコーチ)なども有効に活用しながら、部下育成力を高めていく必要があると思います。